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ノロウイルス」  Noro Virus

 近年、食中毒の分布図を塗り替え、今年の流行語大賞に選ばれそうな勢いの「ノロ
ウイルス(Noro Virus) 」。 発生のピークは過ぎたものの、ノロウイルス中毒は一年中
発生しています。食に携わる者として、正しい知識と対処法を理解しておきたいものです。「ノロウイルス」の基礎知識と2004年食中毒発生状況をまとめてみました。

 
 
■なぜ今年「ノロウイルス」なのか

  ここ数年 12月から 3月にかけてノロウイルスによる感染症や食中毒で、多くの感染者や患
  者が発生していました。しかし、ほとんどは軽症で死亡事件もなかったため、食中毒事件以
  外はあまり報道されませんでした。
   今年は、福山市の高齢者施設で集団感染で7名が死亡した事件を皮切りに、各地で死亡
  事件や感染症が報道されました。 また、検査技術が向上して、それまで風邪とされたり、た
  だの感染性胃腸炎として扱われていたものがノロウイルス感染と認識され、一挙に注目され
  るようになりました。

 
 
■「ノロウイルス」とは

  1968年、米国のオハイオ州ノーウォークという町の小学校で集団発生した急性胃腸炎で、
  最初に発見されたウイルスです。 当初は発見された土地の名前にちなんで、ノーウォーク
  ウイルスと呼ばれていました。
  その後形態が明らかにされ、小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれていましたが、2002年8月、
  国際ウイルス学会で正式に「ノロウイルス」と命名されました。
  実際の大きさは約38ナノメートル(※)。ほぼ球形の非常に小さな病原体です。ノロウイルス
  は人の小腸上皮細胞の中でのみ増殖し、人以外の生物や食品中では増殖しません。その
  ため、食中毒の原因物質と思われる食材からウイルスを検出することが難しく、食中毒の原
  因究明や感染経路の特定を難しいものとしています。
  ノロウイルスは非常に抵抗性が高く、酸、アルコール、熱、いづれにも強く、空気中でも10日
  近く、冷凍では1年間生存可能です。また、感染力が強く、10〜100個で感染・発病します。

    ※1nm(ナノメートル)=100万分の1mm

 
 
■「ノロウイルス食中毒」の発生状況

   ノロウイルスによる食中毒は、従来 「小型球形ウイルス食中毒」として集計されていました
  が、2003年8月29日食品衛生法施行規則の改正により 「ノロウイルス食中毒」として統一し、
  集計されることになりました。
   厚生労働省から発表された2004年の食中毒発生状況(2005.3.1速報値)によると、ノロウイ
  ルスによる食中毒は、事件数では総事件数1,574件のうち248件(15.8%)、患者数では総患
  者数25,436名のうち11,049名(43.4%)となっています。 病因物質別にみると、カンピロバク
  ター・ジェジュニ/コリ(546件)に次いで発生件数が多く、患者数では圧倒的第1位となって
  います。

 
       2004年 病因物質別食中毒発生件数
       
 
       2004年 原因物質別食中毒発生件数
        
 

過去6年の発生状況は、以下の通りです。

 
   1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年
事件数(件) 116 245 269 268 278 248
患者数(人) 5,217 8,080 7,358 7,961 10,603 11,049
死者数(人) 0 0 0 0 0 0
 
 

  ノロウイルスによる食中毒の報告数は増加傾向にありますが、 単にノロウイルス食中毒自
  体が増加しているためだけではなく、検出法の改善やノロウイルスに対する知識の浸透によ
  る報告割合の向上が考えられます。

 
 
■「ノロウイルス食中毒」の特徴 ― 従来の食中毒の常識が通用しない!

@冬季に多発する

  細菌性食中毒は夏季に多発しますが、ノロウイルス食中毒は冬を中心に一年中発生して
  います。

 
       2004年 月別食中毒患者数(速報値)

          

 

A乳幼児から高齢者まで、誰でもどこでも感染する

  ノロウイルスの原因食品のトップはカキ等の貝類ですが、それ以外に野菜サラダ、ケーキ、
  サンドイッチ、和えもの、学校給食のパン等、様々な食品からの感染が報告されています。

 また、発生した施設も、飲食店、旅館、
仕出屋、事業場(老人福祉施設を含む)、
学校、病院、家庭などあらゆる場所に渡
っています。

 

Bノロウイルスは低温好き

  低温環境は細菌の増殖を抑えますが、皮肉なことにウイルスの場合は、低温だと生存し
  やすくなるのです。

 

C予防法は「つけない」と「殺す」

  従来の食中毒の予防三原則は「つけない」「増やさない」「殺す」ですが、ノロウイルスは
  食品中では増殖しないため、「増やさない」はあてはまりません。 そのため「つけない」が
  大変重要になってきます。

 

D効果的な治療法がない

  現在、ノロウイルスに効果のある坑ウイルス剤はありません。 このため、通常、対症療法
  が行われます。 特に、体力の弱い乳幼児・高齢者は脱水症状を起こしたり、体力を消耗し
  ないように、水分と栄養を充分行うことが大切です。

 
 
■感染ルート

@汚染された食品を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合

  ノロウイルスは熱に強く、60℃で10分程度加熱しても病原性を失いません。カキフライなど
  表面は火が通っていても中が半煮え状態の場合は危険です。

 

A調理従事者など食品を取扱う人の手を経由して、二次汚染された食品を食べた場合

  このルートの場合、大規模感染になる危険性があります。 ノロウイルスに感染していても
  特に症状が現れなかったり、お腹の風邪くらいに考えて、保菌者であることに気付かないケ
  ースが多くあります。 学校給食では給食当番だった児童が感染していたため、そのクラスだ
  けに食中毒が発生した例もあります。

 

B患者の排泄物や嘔吐物から二次感染した場合、また家庭や共同生活施設などで
  ヒトからヒトへ直接感染する場合

  老人ホームや介護福祉施設ではこのルートが多く、問題になっています。嘔吐物の処理
  が不十分なまま乾燥し、空気中に飛散したノロウイルスから感染した例もあります。

 
 
■潜伏期間から発症、回復まで
 
    潜伏期間  24〜48時間
    病   期  1〜2日
    主な症状

 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛。軽度の発熱、頭痛、筋肉痛を伴う時もあり
 ます。ほとんどの場合、後遺症はありません。また、感染しても発症し
 ない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。

    排菌期間

 ウイルスは通常一週間程度で排便中に検出されなくなりますが、病症
 が消えた後でも長い時には1ヶ月くらい排菌が続く場合もあります。


 
 
■予防法

  残念ながらノロウイルスには決定的な予防法がありません。常にノロウイルスがあるという
  意識を持ち、感染ルートと衛生管理のポイントを確認し、感染予防に努めましょう。ノロウイ
  ルスだけの対策にとらわれずに、常に衛生的な環境を保つことが大切です。

 

@十分な手洗い

  調理や食事の前、用便の後はもちろん、生ものを扱った後など調理中にもまめに手を洗
  い、二次感染を防ぎましょう。爪と指の間は汚れが落ちにくいので、特に注意するポイント
  です。石鹸自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚
  れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。

 

A調理台や調理器具の洗浄と殺菌

  調理前、調理中、調理後、頻繁に洗浄しましょう。 ノロウイルスの失活化には、エタノール
  や逆性石鹸はあまり効果がありません。ノロウイルスを完全に失活化する方法には、次亜塩
  素酸ナトリウム、加熱があります。 調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、 次
  亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。 
  また、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が
  有効です。

 

B十分な加熱

  食品の中心温度 85℃ 1分間以上の加熱を行えば、感染性はなくなるとされています。
  カキ等の貝類は、特に注意しましょう。

 

C患者の排泄物や嘔吐物の厳重な処理

  排泄物や嘔吐物で汚れたものを片付ける時は、使い捨ての手袋とマスクを着用し、処理
  する人がウイルスに汚染しないように十分に注意しましょう。
  汚物で汚れた床やカーペットに残ったウイルスが乾燥すると、空中に漂い、口に入って感
  染することがあるので、速やかに処理しましょう。ウイルスが飛び散らないようにペーパータ
  オルで静かに拭き取り、その後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すように拭
  き取ります。また片付けが終わったら、よく手を洗い、うがいしましょう。

 

D調理従事者に感染の疑いがある時

  下痢や嘔吐等の症状がある場合は、食品を直接取扱う作業をさせないようにすべきで
  す。また、下痢等の症状がなくなっても排菌期間が続くことがあるので、暫くの間は作業を
  控えるべきです。
  さらに、感染していても症状が現れない不顕性感染もあるので、調理従事者はノロウイル
  スに感染しない自覚を持つことが重要です。

 

E外部からの汚染、調理従事者通しの相互汚染の防止

  客用とは別に従事者専用のトイレを設置したり、ドアのノブ等の手指の触れる場所の洗
  浄・消毒等の対策をとることが大切です。

 
 
 
■参考資料

「ノロウイルスに関するQ&A」 厚生労働省

「ノロウイルスの食中毒を知ろう」 社団法人 日本食品衛生協会

「平成16年食中毒発生状況(速報)」 厚生労働省



 
 
                                  Oyakudachi2005/04Hra 





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